向拝

寺社の礼拝する場所を覆う
向拝(こうはい)とは、神社や寺院において社殿や仏堂の屋根の中央(もしくは庇)が前方に張り出した部分、あるいはその場所のことです。参拝者が礼拝する場所で、初詣のときには誰もがその下で参拝していることと思います。向拝は別名で御拝(ごはい)、または階隠(はしかくし)とも呼ばれます。「はしかくし」と言われてもピンと来ないかもしれませんが、階段の上に設けられるので「階段を隠す」と書く、と言われると納得がいくのではないでしょうか。
向拝があれば日差しを防いでくれますし、多少の雨が降っていても落ち着いて手を合わせることができます。韓国や中国では向拝は見られず、日本独自の建築様式だと言われています。
寺社建築において、主要な柱は円柱とされていますが、向拝に使われる向拝柱は角柱になります。寺社建築では円柱は最も重要かつ格が高い柱とされており、ほとんどの寺社の主屋柱には円柱が使われているとのこと。向拝に角柱を使うのは、参拝側の格をあえて落として神仏を敬うことを意図しています。ここでは詳しく触れませんが、垂木も「疎垂木(まばらだるき)」という、格式を下げたものが使われます。
かつての神社は切妻造りがほとんど
古来の神社建築では、屋根は切妻造りがほとんどだったと言われています。つまり、向拝はなく、正面も背面も同じような姿だったのです。しかし、平安時代の前期ごろから、本殿前方の階段の上に屋根が張り出すものが出てきました。これが向拝で、元は寺院建築に設けられるようになったものが、神社にも採り入れられました。理由としては、参拝者を雨などから守ることの他に、祭祀上の要請もあったのかもしれません。
寺院に向拝が設けられるようになったのは、参拝者が増えたからです。その背景には、当時の世相が影響していました。
平安時代前期ごろは安定した社会は確立されておらず、疫病や災害、あるいは盗賊などの人災によって命を落とす危険性が今より格段に高い時代でした。力のない民衆は仏にすがるようになり、結果として参拝者が増えていったのです。
ちなみに仏教には仏像という拝む対象がありますが、神道では「森羅万象、あらゆるものに神が宿る」という教えで信仰対象に曖昧さを含んでいたために、目の前の苦しみを逃れて安心を得たい民衆の間で仏像を拝むという行為が人気となっていった、という側面もあったようです。
向拝の新設
向拝は伝統のある建築様式ですが、現在でも設けられていない寺社は存在します。そのため向拝を新設する工事が行われることがあります。
参拝する場所の上に屋根を設ければ、参拝者を雨などから守る目的は果たせますが、新設部分の瓦の色が違って見えることもありますし、屋根を単純に延長すると下に突き出す形になり、参拝者に圧迫感を与えることもあります。このため、屋根全体の瓦を葺き替えたり、あえて勾配のゆるい屋根を新設するなど、さまざまな工夫がなされています。
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